|
|
|
ベッドに潜り込むのは遅い方だ。
たいがい、朝に近い3時半くらいに就眠につく。
で、眠る前に2階のベランダに出て、しゃがみ込んで一服吸ったりスル。
幾つかの星をポンヤリ眺め、ぁあ、と溜息をついたりスル。
雲の気配を眺め、天候を占い、ムム、と呻いたりスル。
あるいは、割りバシ3つでコピー用紙が一枚再生可能といったコトを思いだし、ハァ、と吐息をついたりスル。
先夜のことだ。
そうやって少時をうっちゃっていると、塀の横手を、暗い小さな影が幾つも駆けたので、おや? と眼をはった。
ネコだ。
ネコが、5匹、6匹、7匹、8匹、えっ?
12匹・・ 13匹・・
声なく、音なく。
ブロック塀に沿うようにやって来て、庭の端に集い、塀に飛びのり、次々に塀の向こうへ消える。
時折り振り返り、後方に、
「遅れるなよ」
と、黙したまま促しているようである。
ネコどもが夜中に集合するという話はよく聞いたけど、我が眼でそれを目撃するのははじめてだ。
近所の優良、善良、不良のネコどもに違いない。
長いシッポ、短いシッポ。
年齢差不明。
集合地はどうやら我が宅の隣家の庭のようである。
2年ほど前から、ここは空き家になっており、庭は庭というよりも草ボ〜ボ〜の自然への回帰中といった按配である。
暗くてよくは見えないが、その庭に12匹だか13匹だかは集ったようである。
ちょっと観察してやろうという気になり、煙草を取りだし、奴らに気づかれぬよう火をつけた。
うずくまるようにベランダにしゃがみ、斜め下方の隣家の庭に眼を馳せた。
暗く黒いシルエットでネコどもが動いているのが判る。
時折り、眼が炯々と光るのが判る。
愛を語らう様子なし。喧嘩の痕跡なし。
黒い樹木の下で、ただ、シルエットのみが密やかに動く。
ソワソワしているようでもあり、穏やかなようでもある。
互いの安否を確認するがための会合か?
合コンか?
良事の結託か?
悪事の奸計か?
ただの井戸端か?
ほんの偶然か?
町内会会合ともPTA総会とも集団見合ともつかぬ集いであるけれど、依然として声なく、音もない。
何が話され、何が決まりつつあるのか、皆目判らない。
土曜の夜中に開かれるという魔女どものサバトにも似た、不気味が少々。
ともかくも、夜中の3時を過ぎた頃合に、1ダースをこえるネコどもが集まった。
それだけが事実である。
ミャ〜ともミ〜とも、声はない。
ウッとも、オッとも呻かない。
そこからおおよそ20mほど離れた2階のベランダで、ボクはそれを眺める。
やはり、声もなく。
ふと見上げると、西空に、淡いほおずき色の三日月がかかっていた。
これまた、声もなく。
黒い雲がゆっくり移動し、月を半分隠す。
ボクは煙草をもみ消し、部屋に戻るコトにする。
静まり返った深夜の壁で、ゼンマイ仕掛けの時計のネジがゆっくりとけていく。
ベランダの窓を閉じ、ブラインドを下ろしつつ、チラリもう一度、外を窺う。
計りようもない叡智のようなものが闇に溶けている。
そう感じた瞬間、部屋の向こう、階段の下で、何かがピシリと音をたてる。
ボクは耳をそばだてたまま、硬くなる。
階段の暗闇を、何かが上がってくる。
|
|
|
|