とってもドイツ
 ブタが好きなようで、ある。
 ドイツ人が、だ。
 ブタを見れば、旨そうと無意識に思ってしまうようなトコロが、ドイツ人にはあるそうである。
 知的で、かわいい、とも思うらしいのである。
 わたくしどもの眼からすれば、かわいい、に異論はないけれど、知的というのは、どうも今一つ、ピンと来ないのだけれども、ドイツではどいつも知的という感触がブタにはあるんだそうで、ブタと口にすれば一様に皆な、頬が親和にゆるんじゃうという次第な、ようである。
 ブタとドイツの歴史的背景は今一つ判らないけれど、ともあれ、ブタは、ドイツにあっては非常に好まれているようである。
 何事においても徹底を持って成す、というのがイメージとしてのドイツにあるけど、それを証拠づけるように、かの地にはブタの博物館がある・・ バート・ヴィンフェンという温泉保養地がメインのささやかな小さな町にて、1989年にそれは開館したそうである。
 ブタ、ブタ、ブタ、ブタ・・
 なにしろブタ専だ。ブタにまつわるありとあらゆるグッズがそこに収納展示されているそうである。


 ドイツというのは、陸の国である。
  生涯、海を見ずに過したという人物がイッパイいたりもスル、らしい。
 この事情は、地図で見るとイッパツで判る。
 日本とは大違い。この国の海ははるか北の方、北海とバルト海に面したトコロにチビッとしか、ない。
 いや、それでも、チビッとだけ、海がある。
 このチビッとの海しか持たない国が、かのU・ボート潜水艦の軍団を作ったんだから・・ やはり、この国の根底にある『何事にも徹底』を、思わずにはいられない。
 忌まわしきナチにまつわるアレコレは戦後に消去されたと思う方も多かろうが、実は部分においてはそうではない。まったくそうでない。
 この辺り、日本でも、例えば、靖国神社へ行けばよく判る。
 ただ、その置かれた背景とそこから発酵する何物かの意味はドイツと我が国では、かなり違う・・
 U・ボートの博物館が、ドイツには複数ある。
 U995博物館というのもあるそうである。
 砂浜にドドンとU・ボートが置かれていて、周囲には何もない。
 ただ陸揚げされたクジラのように潜水艦が一隻置かれているにすぎないけれど、これがU995そのものの、博物館。
 後部魚雷室の辺りにドアが取りつけられた以外は当時のまま。
 何事にも徹底を標榜してのコトか、艦内には説明書きのようなものは一切なし。おまけに艦内環境も当時のまま、照明もそれがそうであったままにされていて、暗い、狭い、の過酷さを痛切に知らされるように、なっているそうである。偏狭で窮屈な暗い封鎖空間の中、50名ばかりの人員が、冷蔵庫もない金属の筒内で、オイルの異臭と糞臭と体臭と、さらなる騒音に耐えて生活し、かつ戦争をするという苛烈を、皮膚の感触として伝えようと、そのように、展示されているようである。


 ドイツではビールにソーセージ、あるいはポテト・・ が食のイメージとして我らにはあり、事実、ミュンヘンには、その名もジャガイモ博物館なるものがあるらしいのだが、さて、旬なモノといえばコレはどうだろう。

 日本の秋の味覚の王者といえば誰もが松茸をあげるに違いないけれど、同様、かの地にあっては、春に、アスパラガスが松茸に相応するような旬の味覚の王者として君臨する、そうである。
 日本ではまず見かけないホワイトアスパラという種類がソレらしいのだが、春たけなわにはコレが天上知らずの高値になるんだって、さ。
 何しろ肉料理よりも高額となる・・
 シュローベンハウゼン、というドイツの田舎に、このアスパラガスの博物館がある、らしい。
 ここは元監獄だったそうだが、過去は人が収監されてたけど今はアスパラという対比が、なかなか、面白い・・
 キチンと園芸員みたいなのもいて、春ともなればアスパラガスの収穫実演とかもあるそうな。博物館名義のアスパラガスに関する著作も何冊か、あるそうな。


 さて。
 以上、ある本からの仕入れた雑事である。
 東京書籍という版元から出た「とってもドイツ博物館めぐり」という本がネタである。
 著者は小前ひろみ氏。
 上記にあげたのみでなく、本書には、例えば「シュテーリ・小さな車博物館」や「ドレスデン衛生博物館」「ツェッペリン博物館」「縁日&興行師博物館」「トランプ博物館」・・・ 多数の博物館が紹介されていて、ちょっと眼をみはらさせられる。
「シュテーリ・小さな車博物館」は日本のテレビでも紹介されたコトがあるが、個人の経営である。
 TVC-15は最近、小さな車をテーマに模型を作ったりもしているけれど、その最初の資料は、この「シュテーリ・小さな車博物館」のテレビ画像であったりスル (^_^;)。
 ちなみに筆者の小前氏も、実に、この番組が旅の出発であったと書いていらっしゃる。

 小前氏も、むろん、個人で、個人のお金でドイツへ出向き、自ら対象にカメラを向けたようである。だから情熱の深度が深い。そこがイイ。
 本文も写真もイラストも著者自身というトコロがまた良い。
 澄んだ批評眼が文の根底にあるのも、イイ。
 多くの博物館が日本の場合、一種の化石めいた静的安置であるのに比して、ドイツの大中小多数の博物館が一種の活気でもって在り続いているという点を紹介しているトコロも、イイ。
 もっと読ませろ、もっと見させろ、と思わずにはいられない良書である、これは。
 そんな次第で、ちょっと紹介した。
 筆者が云う通り、『物から何かを読み取る、読み取らせる姿勢』がドイツの多々の博物館には秘められているようである。U・ボートはそのホンの一例だ。
 その潜水艦の近くに、海軍顕彰記念館というのもあるそうである。
 規模の大きい博物館でもあるが、第二次大戦の慰霊碑のような場所でもあるようだ。
 されど、そこには大将や高級将校を称え奉るような像も記述もなく、命を落とした海軍の方々全てが一様に平等に、一命を落とした地図上の箇所に十字をつけるという方法で慰霊されている、ようである。
 ふむ。

 飛行船、といえば、やはりイの一番で思いおこされるツェッペリン・・
 ドイツにはこの飛行船の博物館が4軒、ある。
 その内の一軒、メアスブルク・ツェッペリン博物館はハインツ・ウアバンさんという人の個人博物館だそうである。
 飛行船といえば、そのメカニズムやら水素ガスやら、あの忌まわしくも高名な米国レイクハーストの事故やら、もっぱらハード面でもって見遣る傾向が多々なれど、この個人博物館では主に、客席での食器や調度品がコレクション・テーマに置かれているようで、それらを見るに、いっそ、濃密、いっそ、濃厚な、良質なる時代が過去にあったというコトが判るという仕組みになっている、ようである。
 御承知のようにツェッペリンは日本にも飛んで来たが、そのさい、はるか遠国までの旅客達の旅の昂揚をいざなうべく、船室の壁には浮世絵が飾られていたそうである。
 その浮世絵は、今、この博物館にある。
 当時、誰しもが飛行船で旅出来たワケではないけれど、悠々、時間を満喫したツアーがあった時代の良好さというモノがしのばれる・・ 

 博物館、というものは、いわば、時間を固有のカタチにしてみせる装置かも、しれない、な。
 モノ見るコトでそれが示す時間という形のない「在りよう」と向きあうという意味で・・・
 うむ。

 いって見たい、な。
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図番豊富にして文はナメラカなり 良書
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