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| 数年前、自宅の生け垣としてコニファーを8本、植えた。 コニファーというのは針葉樹の総称で、かなりの種類がある。 昔より欧米では庭木として多用され、近年、日本でもアレやコレやのコニファー類が売られるようになった。 ゴールドクレストという品種が一番多く流通していて、価格も安い。 これを買った。 モントレーヒノキという別称もある。 春になると黄に近い緑に葉がおごる。 小さな、ヒョロっとした、1本800円ホドの代物を8本。 これを園芸センターで買い、MINIに積んで持ち帰り、植えて水をやったワケだ。 3年が経つ。 写真の通り、よく葉がおごった垣となって、買った当初の40センチにも満たない苗木の面影なんぞはどこにもナイ。 育つもんだワイと感心するコトしきり、である。 冬の冷気を耐えてこの春を迎え、さらに一段と大きくなってやろうと新芽が息吹いている。 柑橘系のそれに似た微かな甘さを予感させられるような匂いもある。 新緑の色とあいまって、ページを一枚めくって新鮮を味わうような、活き活きとした温もりがある。 |
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ところが・・ 先日、弟が訪ねてきたさい、 「兄ちゃん、虫がいるで・・」 青々茂るコニファーの小枝を指差して、よからぬ発見をしてくれたのである。 見てビックリ。眼を覆いたくなるホド、なるほど、イッパイいる! イモムシが、大繁殖というか大発生というか・・ とにかく、枝という枝に無数の緑色のムシどもが取りついて、新芽をむさぼり喰っている。 |
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| シゲシゲ眺め見るに体表に長めの黒い毛が等間隔に生えていて、これはイモムシというよりケムシの類いだと判ったけれど、よもや、このような虫が寄って来ようとは思ってもいなかったので・・ 油断もイイとこ。 とにかくあまりの大量に、ちょっと後ずさりするような気分になった。 葉がうまいのか、栄養がよいのか、いずれのケムシもムッチリとプリンプリンに豊満で、一瞥すると気色が悪いけど、色こってり、艶こってり、と完熟の気配濃厚である。 あと数日もすればサナギを作り最終段階の変身を遂げるという感触である。 それゆえ、今日も、明日も、腹イッパイにコニファーの新芽を喰らうぞ、という気配アリアリである。 そうされては・・ むろん、困る。 |
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割り箸で一匹一匹掴んで駆除していったけど、捕れども捕れども、ソッチの葉コッチの葉、アッチャコッチャ、とにかく、いるイルいる。 あまりの量にビビっちゃいつつ、笑ってしまった・・・ 何事も煎じ詰めていけば一種の壮大なユーモアになるというような記述を読んだコトがある。 ナチスの収容所のコトを記した本で、あの時、ナチスは人体実験を含む外道法外をやらかしたワケだけれども、収容された人々の排泄物を、それを肥やしにするというのではなく、より有益な何物かに変じさせようとヒタムキな情熱を持って実験を繰り返していたそうである。 北海道の酪農家のサイロにそっくりな建物が今もアウシュビッツに建っている。 人の大便を。 毎日、何トンも。 メタンガスのそれでなく純然とした機械油にしようとした、そこは「工場」だ。 煮たり焼いたり薬品を混ぜたり、幾層ものフィルターで濾しに濾して、ウンコを機械油に変じさせようと躍起果敢大真面目に励んだ夢の跡である。 糞臭にたえつつの膨大な労力に比して、おそらく得たモノはほんの耳のアカ程度の僅かであったに違いない。 暗い絶望の笑いが確かに込み上がる・・・・・・ |
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| 蛾か? 蝶か? 何になるのか定かでないけれど、せっかくの生け垣を食われてしまっては台無しゆえ、駆除という名の殺戮にいそしんだワケだけど、牛乳のパックに放り込んだケムシの群れを眺めるに、ナチのそんな暗鬱を思いだしたりした。 過度の膨大がもたらした哄笑かしらん、これは・・ と、ケムシを取りつつ私は笑った。 陽射しは眩しく、午後の「労働」と陽光がために額には汗がにじんでいた。 木陰で一休みし、缶ビールをグイッとあおると、休日の喜びめいた感慨もわいてきた。 眼の前の牛乳パックの中では大量のケムシが、洗剤が混入されたネバネバした水の中で溺れつつあった。 パックの下の方の者は既に溺死か窒息死か中毒死か、あるいは圧死しているに相違ないけれど、最上方では死を間際にした苦悶と苦闘の叫喚にわき立っていた。 深い牛乳パックの淵を登っての脱出は不可能だけれども、せめぎあうようにしてムシ達は果敢必死に登ろうとあくなく蠢き続けていた。 その横で私は、日の温もりの心地好さを味わう。 ビールのうまさを堪能する。 一服すると私は腰をあげ、またコニファーの方へ歩いて行った。 片手に割り箸を。 遠いあの日、収容所の看守がおそらくそうであったように、満ちた気分で。 |
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