皆既月食
 久しぶりに月食を見た。
 ゆっくりと時間のかかる皆既月食というコトゆえ、最初から最後までジッと眺めるという次第ではなかったけれど、たぶん、多くの人も見たに違いない。
 9時をちょっと過ぎた頃には、私の家の近所の方々も複数が外に出ていて、夜空をあおいでいた。
 道路の向こうの駐車場では天体望遠鏡を持ち出した人もいる。
 東南の空で月の左下辺りから徐々に暗くなっていく様子は、けれど、さほどに劇的ではない。
 ぁあ、地球の影が月面に落ちてるんだんなァ、と天体の運行を意識してはみるものの、大きな感動には遠い。
 どこか淡々黙々とした気配でもってコトは進行中という按配。

 今よりもっともっともっと夜空が暗く、しかも天文の基礎的知識がなかった頃には、月食というのは、さぞや不気味であったろうなぁ、とチラリ思いもした。
 なんか良くないコトがはじまっとる・・ と不安な面持ちイッパイで夜空を眺めたに違いない。
 白昼に月が太陽をさえぎるのが日食だが、大昔、卑弥呼が没したといわれる年に皆既食があったコトは既によく知られた事実のようである。
 彼女の死と突然に暗く陰った太陽との因果とは何だったんだろうと、月食を眺めつつ、日食を思ってもみた。

 ゆっくりと影に覆われた月は10時半前頃に完全に影に入り、とはいえ、消えて見えなくなる次第でもなく、ほおずき色のような、赤茶けたような、一種の荒涼な感触のある天体として、電信柱の向こうにかかっている。
 月という感じではなく、天体としての感触を濃厚におぼえさせられるのは、その赤茶けた錆色ゆえに、火星のようなソレを想起させられるからだろうか・・
 影にある間、月面ではやはり温度が下がるのだろうか?

 いまだ月がどうやって生成されたか結論が出ていない。
 極めて有力な説として、遠い太古に大きな絶句するホドに大きな隕石が地球に衝突し、地球の部分をもぎとったというのがある。
 衝突後、数億年、隕石と地球の欠けら達は地球を取り巻く輪として回転していたけれど、やがて、徐々に一つになって今の月となる・・・・
 そうなんだろうか?

 月は今、毎年数センチづつながら、地球からは遠退いているという。
 拮抗しあう引力のバランスを僅かづつながら崩し、いずれは地球から去るという。
 そうなんだろうか?
 いや・・ どうも、そうであるらしい。
 遠い遠い先の話ながらも、いずれ子が親から独立するように、月もまた親元を巣立っていくようである。
 その先、どうなるかは知らない。
 少なくとも、旅立った後に、仕送りを要求するコトはないに違いない。

 20年程前に「スペース1999」という番組があった。
 主演はマーチン・ランドーさんで、 地球から離れてしまった月を舞台とするSFだった。
 昨年公開された「X・ファイル」の劇場版にて、そのランドーさんが出ていたけど、ビックリするくらいに老けていたっけ。
 月にとっての20年は微小な時間だろうけど、人間の20年は・・ 大きいや。

 
7月16日(日曜) 午後11時34分 月食進行中
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