プロデューサー
 ブロードウエイでは風刺劇ミュージカル「プロデューサー」がかなり流行っているそうである。
 トニー賞で12部門も取ったというんだからスゲ〜や。
 元となる原作はメル・ブルックスの映画「プロデューサー」。
 およそ20年程前に私はこの映画をレーザーディスクで買ったけど、当初、それほどにオモロイという感想は持たなかった。
 メル・ブルックスといえば、ハチャメチャな作品で高名だ。
 むろん、「プロデューサー」も、史上最低のミュージカルを作って大儲けしようという話そのものが既にハチャなのだけれど、映画としてのハデさはなかったよう感ぜられる。
 ただ、この作品で主役を演じたビリー・ワイルダーが何ともいえず良く、以後、彼が出てくる映画は、気づく範囲で見渡してはきた。
 メル・ブルックスが監督した75年の「ヤング・フランケンシュタイン」は大好きな一本だ。
 ワイルダーはこの作品で脚本の一部も書いてるけど、役者としての彼の、静と動の極度の相反っぷりが好きである。
 どうも嗜好として私には、静なる内の狂気とか、活気の中の静とか、ヤラシそうでヤラシくなく、ヤラシクなさそうでヤラシイ、といった相対するものが一ケの個体内にあるのを好むタチがあり、この嗜好にワイルダーの演技はピッタンコ符合するから、嬉しくていけない。
 アーサー・ヒラーが監督した76年の「大陸横断超特急」は、この人の本領がプリプリバリバリに発揮された良作で、繰り返し見て飽きるコトがない。
 劇中、彼は三回、列車から外へ放りだされるのだけど、投げ出される前・投げ出された後、表情、声、しぐさ、全てが絶妙にして精妙で、可笑しみが加速度を増す。
 この作品で珍コンビを演じた黒人俳優リチャード・プライヤーと挑んだ、「スタークレージ-」がまたメチャに良く、極上のワインだか何かにありつけたみたいな気色に弾んじゃう。
 面白いのは、この人の場合、相手役が美女であればあるホドに、御身が引き立つという点で、三枚目であるハズの役の上での彼が軌道上の衛星のように見事に美しい弧を描いて回転してくれるから、これがまた何とも嬉しくてたまんない。
 コメディでありながらも演技に浸透性のある真面目が隠され、そのマジとハチャが交互縦横に立ち現れてくるから、こりゃ、たまらない。
 だから、この点で82年の「ハンキー・パンキー」は相手役女性が喜劇役者だったのが禍いしてか、何だかラブシーンはしまらない。しまらないではないけれど、少しエキスが抜かれて、本領が薄まってるよう見受けられる。「大陸横断超特急」でのジル・クレイバーグ との大人のラブシーンに遠く及ばない。
 この人の見せる劇中の愁いた表情は必見である。あるいは一転、その愁いが弾けて狂喜する様子も必見である。
 ウッディ・アレンの72年作品「セックスのすべて」における医者役の彼が見せる演技は珍演スレズレな名演である。この人でなくてはダンコ成しえなかった名演である。
 オーバー。
 一見はオーバー・アクションに見える。
 されど、一見オーバーに見えるマゾ的なほどの動作表情の隅々に、しかし、この人の場合、繊細がたえずあって、それが・・ スイカにお塩をパラリ振りかけたら旨いと同じ、美味しいものがいっそうにという感じで味覚の花が咲く感じなのである。
 以前、この欄で触れた「チョコレート工場の秘密」は、彼の良作の1つでもあり、詳しくはソチラを読んでいただくとして、とにかく、ボクはこの人の、大がつくホドなフアンなのである。
          (^_^;)。

 だから、今回、縁(ゆかり)の「プロデューサー」がトニー賞12部門受賞という快挙を聞いて、直接の関連はないかもしれないけれど、なんか、嬉しくって、コレを書いているワケ。
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Gene Wilder in iBook
from YOUNG FRANKENSTEIN
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