四天王
 足を傷めた貴乃花が気合でもって勝った今回の大相撲は、おそらく、相撲史に残る大一番というコトになるのであろうが、勝った瞬間にテレビに映った彼の壮烈な形相での喜色に、私はなぜか、奈良の東大寺にある四天王の仏像を思ってしまった。
 私は相撲のフアンでもなく、たまたまスイッチを入れたテレビに、この一番がニュースとして映ってたというに過ぎないのだけれど、貴乃花の形相に、古い時代からの日本人の一つの顔が反映されているというコトを比較として四天王を咄嗟に思い浮かせてしまった・・
 貴乃花のそれは、憤怒めいた顔ながらも喜色を破裂させている不思議な顔だった。

 四天王は、四天というくらいだから、像は4つある。
 東大寺のあのデッカイ建物を正面にし、その左側、ちょっと歩かねばならぬ距離に戒壇堂がある。
 四天王はそこにある仏像で、守護神である。
 四方を警護する神さん。
 名前を列挙すると、持国天、増長天、広目天、他聞天、となる。
 貴乃花の形相は、その内の、多聞天と増長天の表情の真ん中くらいな感じのものであった。

 表情というのは一瞬のものだけど、その一瞬を「フィギュア」としての四天王像はよく捉え、いわば四天王像というのは、文句なくフィギュア中のフィギュアなのであるけれど、貴乃花のあの一瞬の顔は、これは「フィギュア化」に価いする表情だったなぁ・・ 内心ひそやかにそう思ってもしまった。

 警護する神さんゆえ四天王はいずれも体躯ごりっぱで、そのイメージと貴乃花とがうまくダブリもし、なおもて、あの表情ゆえ、連想が奈良の戒壇堂の仏像へと飛んでしまった。

 別に意味はない。
 相似を語っているにすぎない。
 人の、その表情を面白いもんだと思って、こうして書きとめただけでアリマス。
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