スペイン

 Michel Camilo & Tomatitoに「スペイン」というアルバムがある。
 ジャンルでいうならジャズにあたる。
 ピアノ演者とギター奏者の、すなわちMichel Camilo & Tomatitoがチック・コリアの名曲「スペイン」をカバーしたアルバム。
 ただそう記すと、それだけなモノって感じだけれども、聴くと、ジャズとフラメンコが見事に融合した秀逸なアルバムというコトがわかる。
 わけても5曲め、「Two Much/Love Theme」は、私には、永遠性のある、深い所に浸透する名曲と感じられ、だから、気がつくと何度も繰り返し、これを聴いているといった次第。

 ラブテーマという副題は、ある種陳腐で、それでいて不変で、当然にそれが静かな曲であろうコトは概ね聴く前から了解できるのではあるけれど、静かに浸透する柔らかさと速度と透明さは壱品である。
 久しくラブテーマといえば、私にはヴァンゲリスのBLADERUNNERで使われたそれをベスト1と思いきめ、実際、いまだ、その曲は愛聴の上位に置かれた名品でもあるけれど、こたび、こうして聴くコトとなったMichel Camilo & Tomatitoの「Two Much/Love Theme」は、我がベストのポジション交代が想起される絶品と、思われる。

 狭い、小さい店で、もう他の客もなく、ただ朝を待つだけの、蒼く白い刻限に、カウンターではなく、その向こうの、トイレに向かう廊下で、泣き崩れていた人が耐えていた積鬱を吐きつつやがて眠りに落ち、私は為す術もなくその場にうずくまり、彼女を膝に抱いたまま、ただ、ただ、ジッと動かずに、静止している・・
 眠る人の髪をくしけずり背をさすり・・ そんな数時間あまりの情景を一曲に集約すれば、まさにコレであろうといったシーンの凝縮と心の動きが感じられて、聴くたび、軽い痺れを伴った、されど茫漠とし、かつ、拭いようもないいとおしさにくるまれている自分というカタチが音符になったら、まさにこれなんだワサな感触につつまれて・・ ただただ曲に浸透されるまま私は茫然となる。

 奏でられるのは一対のピアノとギターのみ。
 それが実感のある重みとして、心地好い。
 やってくる朝のように静かで、深く、確実に、昂揚が秘められて、かつ、澄明な夜明けであるがゆえにの、その先の苦渋や苦悩の予感までが音に含まれてもい、少しだけ恐ろしくも、あり・・。
 「Two Much/Love Theme」は、そんな感じの曲。
 何事か核心をまさぐられ、それが的確がゆえに声を失ったみたいな、そんな曲。
 恋の予感でも、はじまりでもなく、より深く、ただただ愛しいばかりで欲がない・・ そんな気分を描き、縫い、軽すぎず重すぎず、浸透力のある強さを含有して、曇りがない。
 絹のしなやかさとなめらかさに満ち、おだやかで、たおやかに、緩く流れるように 永遠性のある時間の凝縮が暗示としてでない音の結晶になって。
 見事です。実に。



 お耳がある方なら聴いてみてください。
 今、恋してる貴男や貴女には、とくに、おすすめです。

 
ちなみに、
上記にふくまれる内容は表現上の例えですので誤解なきよう、念の為 (^-^)
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