パンク

 かなり降っている雨の中で自転車がパンクした経験がある方は、アンガイ、少ないと思われます。
しかもそのパンクは目的地までのちょうど真ん中。
スタート地点から目的点までおよそ8キロの、そのど真ん中。
おまけに、時刻は夜中の12時頃・・。
どうです?
経験がおありですかな?
経験がないゆえ、一度、体験したいと思いませぬか?
ついでを申せば、このパンク時、カサで乗車でありました。
日常、雨天のさいの自転車に関してはカッパ着用を自身に言い聞かせ、実行していたにも関わらず、その真夜中のみは、カサ・・。
日時は05年4月の11日から12日に替わるハザカイ。

雨音のみが支配する深閑とした夜の住宅街。
パンッ!
拳銃の発射音がごときな大音声と共に後輪に激しい異変です。
即座に、
「やられた! パンクしおった〜」
悲嘆がひろがりまする。
スタート地点からも、目的地からもほぼ同じ距離。
引き返すワケにもいかず、自転車を押して目的地に向けて徒歩の開始という、トホホな状況であります。
地域的情報をお伝えするなら、百間川という河川にかかる橋を渡る400メートルほど手前にてパンクし、そこから数キロ先の弓之町というトコロに向かわねばならぬ状況下、であります。
御承知の通り、パンクした自転車は重うございます。
これを片手で押しつつ、片手でカサさすという次第。
たまさか、懇意にしているタクシードライバーがあり、ひょっとしてと携帯で電話したものの、二人とも休み!
御一方はその日が休みと知っていたものの、このさい、ワラにでもすがりたい思いでありました。時間が時間ゆえ車を持つ知友にヘルプを申し出るワケにもまいりません。
万事休して、トホホな徒歩進軍です。
靴は濡れ、ズボンも濡れ、カバンも濡れ、自転車を押してカサさすという不便な姿態ゆえ、たちまち片腕も濡れてくる。
そうこうする内、背中からヒタイから汗が噴き出し、今度は内側から濡れてくる。
ヒタイの汗を拭うには、行軍を止めねばならず、外から濡れて浸透され、内から濡れて侵食され… ナンギこの上ない有り様でございます。
道中には、前記の百間川を渡る橋と、もう一本、旭川を渡る橋がある・・ 都合、2本の橋を越さねばなりませぬ。
歩くとよ〜〜〜く判りますが、橋というのは坂でもあるワケです。坂をあがり、坂をおりる。
これを自転車押してヨタヨタ行軍します。
むろん、ボクは10代の若造ではないゆえ、ここで自棄をおこしはしません。この行軍が目的地につきさえすれば終わるコトをわかっております。よく理解しております。
アリの一歩は小さく時間は要するけれども、最終的には"達成"が待っている。
だから、濡れつつも一歩進むたび、"達成"が近寄ってるぞと自覚しちゃったりもします。
が、その理屈がわかっていつつも… 苛立ちが煮えた湯のようにフツフツ沸き起こってきやがるのです。
黙々一歩一歩を踏みしめ踏み出すたび、天を呪い、自身を呪い、アレを呪い、コレを呪いと、
「てめ〜、この〜!」
「エ〜イ、こんちくしょう」
てな感じの、目標をさだめられない悪態がノド元にまでこみ上ってきやがるのです。
同時に猛烈な自省が逆巻いてもきます。
「オレ… 何やってんだろ」
自虐感に満ちたさらなるトホホな感情が沸いてくる。

膨大な情報が瞬時に飛び交うネットワーク世界に生きながら、生身のボクは、雨に濡れ汗に濡れ、水を含んで重いスニーカーをジュブジュブいわせ、濡れたズボンを足にからませ、深夜の街に向け、自転車を押して歩いてるという次第・・・。
たかがパンク。
されどパンク。

どうですか?
あなたも一度、上記の次第を味わいませんか。
思いがけないホドに大きな、"感情の起伏"、というのを体感できますぞ。
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