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早いもので、コンビニでバイトを始めてはや3年が経過しようとしています。
コンビニのバイトというものは、少なくとも「締めきり」というモノが存在しない分、漫画描きやアシスタント稼業と比較すれば格段に楽な仕事ではあります。
定時に出勤し、定時に帰る事ができます。
少なくとも締めきり日当日、「いつあがるんだろ〜なぁ、この原稿・・」と、まだ下描きしか入ってない背景の山を前にして溜息をつく、という事は皆無です。
コンビニのバイトの経験の無い方達は、「レジを打って商品をきれいに並べてればいいんだろう」という認識しか無いかも知れませんが、実は結構仕事はあります。
特に深夜帯には多種多様な商品が山のように搬入されるので、完全に肉体労働です。
その間にもお客様は容赦なくレジに来ます。
お客様をお待たせする事は絶対に避けなければならないので、そのたびにレジにすっ飛んでいく事になります。
笑顔の一つも作らなければなりません。
さて。
こうした仕事を日々こなしているバイトにとって一番ありがたくないお客とはなんでしょうか?
もちろん強盗は勘弁してほしいし、暴力をふるったり言われも無いイチャモンをつけてくるお客もいます。
酔っ払いも毎日来ます。
たまに訳のわからない事をわめく常軌を逸したお客も来ます。
異臭を放って店内を悪臭地獄に叩きこむお客もいます。
しかし、少なくとも深夜帯のアルバイターなら皆口をそろえて言うでしょう。
「立ち読み!」
そうです。
立ち読みをするお客です。
これほどカンに触る客もいないのです。
年齢は一定してませんが、大体は大学生ぐらいの事が多いですね。
女性もいますが、ほとんどは男性です。
彼らは夜中にさも当然のような顔をして入ってきて、何時間でも居座るのです。
次から次へと雑誌を読破していくヤツもいれば、単行本主体のヤツもいます。
1時間が経過しようかというあたりからこちらの怒りは次第に頭をもたげだし、2時間目に入ればもう怒り心頭、2時間以上になるともう商品を叩きつけてやろうか、と思い始め、3時間目にはどうやってコイツを殺してやろうか、家を見つけ出して火ィでもつけたろか、とアブナイ事を考えるようになるのです。
(^^;)
またそういうヤツに限って、さんざん立ち読みをした挙句の果てにレジにやって来て、タバコ一箱に一万円札を(文字通りに)放り投げてきたりするから爆発しそうになるのを押さえるのに必死となります。
何故それほど嫌われるのか?
立ち読みをする側から言わせれば、「仕事のジャマをしてるワケでもないし、いいじゃん」という軽い気持ちなのでしょう。確かにその通りだし、本が痛む、というのも理由になりません。
(雑誌や書籍は返品がきくので、派手に破れてでもない限り店の損害にはならないのです)
キチンと並べた本を荒らされる、という事はありますが、これは他の商品についても同様であるため、確たる理由にはなりません。
実はハッキリした理由の無い嫌悪感というのが一番厄介なモノなのでありまして、明確に説明できない分、鬱積して噴出する率が高いのです。
理由がハッキリさえしていれば、対処法も自ずと見えてくるのですが……
これは私の個人的な考えなのですが、多分、こちらが一生懸命に仕事をしている横で涼しい顔をして何時間もタダで本を楽しんでいる、という行為がカンに触るのではないかと思うのです。
あいつ、何時間いやがるんだ、そんなにヒマなのか、こっちは汗水たらして働いているのにイイご身分じゃねぇか、どういう了見だ、図々しい、マンガ喫茶なら金を取る所なのにタダ読みかい、目障りだ、どっか行っちゃえ、あんなヤツでもレジに来たらすっ飛んで行って応対しなきゃならないのか、冗談じゃねぇ、ふざけるな、なめんじゃねぇぞ、ぶっ殺してやる!・・・・
と、かようにやり場のない怒りはエスカレートしていくワケです。
もしコレを読まれている方の中で、「深夜にコンビニで立ち読みするのが趣味(もしくは習慣)」という方がおられましたら、まちがいなくそこのコンビニでは侮蔑的なあだ名をつけられて毛虫か蛇蝎のように嫌われているハズです。
刺されないうちに悔い改める事をお勧めします。(^^)
中には飲み物・食べ物持参でやって来て、それらを平積みしてある本の上にのっけておもむろに床にベッタリ座りこんで読み始める大馬鹿者もいたりしますが、こうなると営業妨害に抵触するのでこちらとしても「止めてください。」と声をかける事ができます。
しかし、店にもよると思いますが、ウチの店では「立ち読みも客のうち」という方針ですので、よほどの事をしでかさない限り、声をかけて止めさせる事ができません。
昔の漫画によくある本屋のオヤジのようにハタキでパタパタ、というワケにもいきません。
新刊は来ても早い時間には並べない、本を整理するフリをしてジャマをする、という手ごときでは屁とも思わず読み続ける、通い続けるヤツばかりです。
さて・・ これら悪しき客をいかにあしらうか・・・・・
冬の厳冬期であれば、暖房を切って入り口を全開にする、というのもよくやる手の一つです。
しかしコレには危険が伴います。
すなわち、こちらも寒いのです。
同僚の一人は、真冬の寒い日に入り口を開けただけでは物足りなかったのか冷房まで効かせて対抗したそうですが、次の日から高熱を出してぶっ倒れてしまいました。
彼は「壮烈なる戦死者」として密かに称えられたものです。
ある日の事です。
店には有線が24時間流れていて、その局は固定されていて本来いじる事は禁止されているのですが、「いつも決まりきった音楽ではバイトさんに気の毒だから、好きな局に変えてもいいですよ」という店長のありがたいお言葉をいただきました。
瞬間、「これだ!」と閃きました。
有線には多種多様な局があります。
コレを使って立ち読みを追い出す事ができないだろうか?
とてもいたたまれない雰囲気にしてやれないだろうか?
「精神攻撃」
コレは行けるかもしれない・・ !!
さっそく深夜帯のバイト数人で協議が行われ、何度も実験が試みられ、各人の得たデータが積み重ねられていったのです。
私には勝算がありました。
というのも、以前のアシスト先の中には有線を入れている仕事場もあったので、おおよそどんな局があるかは把握していたからです。
実に様々な局があります。
音楽ばかりではなく、英語講座や落語、はてはただ「羊が一匹、羊が二匹・・・」と数えているだけの局、心音(心臓の鼓動音。リラックスできる・・らしい)なんてのもあります。
どれで攻めてやろうか・・・
コレが効くんじゃないだろうか・・・・
何としても憎っくき立ち読み野郎に一矢報いずにはおくものか!!
まずはキテレツ度の高い上記のような局から順にトライしていきました。
が。
予想に反してこれが意外に効果が少なかったのです。
羊だろうが心音だろうが、パチンコ屋の店内放送だろうが閉店のご案内のアナウンス(爆)だろうが、立ち読みの猛者共はいささかもビビる様子が無い。
一般の、おそらく仕事帰りにたまたま立ち寄って雑誌を手にとっていたであろうお客様達は不審な顔をしながら出ていかれるのですが(ゴメンナサイ)、クソ虫どもは涼しい顔。
ううぬ、さすが心臓に剛毛が生えているような連中め、そもそもそれだけの図々しさがあるからこそ毎晩のように恥ずかしげもなく立ち読みに来やがるのだ、精神攻撃の効かぬ繊細さのカケラもないこの・・・(以下アブナイので削除)
こうなればアレしかない。
アシスト時代に徹夜の連続の果てには危険なので絶対厳禁、と封印されていたアレしか・・・ 。
その名は「ガムラン」。
インドネシアを中心に古くからある金属打楽器によるアンサンブルです。
お聞きになった事のある方も多いと思われますが、多重な金属音によって構成されるこの音楽は、徹夜開けにヘッドホンで聞くとマジにトリップしてしまう、という摩訶不思議なモノであります。
コレはある程度の効果がありました。
なにしろコンビニの空間ごと不思議時空へと持って行ってしまうようなモノです。
最初は平気そうに見えていた立ち読み連中も、そのうちどことなく居心地悪そうにモゾモゾし始めたあげく、ついには本を置くようになったのです。
コレでほぼ半数が駆逐されました。
始めての勝利!!
恐るべしガムラン!!(^^)
しかし、コレほどの攻撃でも効かないウイルス野郎もいました。
それどころか、そいつらはガムランが心地よさそうなのです。
そうか、こういうのが元々好きな連中もいるのか、こいつは困った、計算違いか・・・。
気持ちよくさせては逆効果です。
今まで以上に居付いてしまったら目も当てられません。
どうしよう・・・・・・・。
そうこうするうちに、ある日「壮烈なる戦死者」君より貴重な実験結果がもたらされました。
「オペラが効くみたいですよ」
オペラ?
あれが?
そうだろうか・・。クラシックとかと同じで、かえってリラックスさせてしまうだけじゃないのかなぁ?
不審に思いながらも、試してみました。
そして・・・・。
納得しました。
効果テキメンでした。
残るウイルス共が、ガムランの時よりも短時間で耐えられなくなって出て行くのです。
やりィ!!(^^)
理由は明らかです。
ガムランが奇妙な雰囲気を作り出すモノなのに対して、オペラ、それも特に男性独唱によるソレはコンビニ内の空間を一気に「オカルト空間」へと変貌させる効果があったのです。
「オーメン」等の映画とかを思い出されると理解しやすいかと思いますが、ああいうコワイ映画にはたいてい賛美歌とか合唱による音楽が効果的に使用されています
オペラの場合、実際に映像を目にせず、その音楽だけを聞いていると非常にブキミに聞こえるモノだ、という事をこの時初めて知りました。
ましてや、真夜中のコンビニです。
違和感と醸し出される恐怖感は尋常ではありません。
その大した破壊力には一種感動すら覚えました。
ありがとう、オペラ!!
サンキュ〜、テノ〜〜ル。
サンキュ〜、ハイバリトン。
こうした涙ぐましい努力が実ったのか、最近では立ち読みに来る客はめっきり減りました。
逆に立ち読みをしない普通のお客様の数は増えてますから、店の売上げの面から言っても立ち読み客というものはやはりガンなのでしょう。
立ち読み死すべし。(^^)
最後に、まだ一度しかやってない手を一つご披露しましょう。
ある日、まだ立ち読み客が花盛りであった頃(迷惑な花だ)、バイト時間が終わって私服に着替えて雑誌コーナーで立ち読みをしていた同僚がいました。
もちろん、立ち読みは迷惑だという事は身にしみて重々承知してますから、そうした場合でも実際に買うための行為の一環であり、せいぜい5〜10分ぐらいのものでしかありません。これは他のコンビニに行った時にはさらに気を使って短縮するものです。嫌われたくありませんからね。
その時は他の立ち読み客が6人ほどいたでしょうか。
そこで、まだ仕事中だった私は何の気無しにただ、ふざけて、同僚の足を思いっきり(に見えるように)スパーン!と蹴り上げて大声で一言。
「お客さん、立ち読みは困りますねぇ!!」
同僚は振り向いてニヤリと笑いました。
冗談だとわかっていたからです。
ところが、それを見た他の立ち読み客は全員慌てて本を棚に戻して、一斉にそそくさと逃げる様に店を出て行ってしまったのです。
客が一人もいなくなりガランとした店内で、2人共ゲラゲラ大笑いしました。
笑いながら、
「これ、使える!!」
幸か不幸か、この手を使う機会は未だに無いのですが。
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